「息子を立ち直らせた父の背中」
お元気ですか? 明智信作です。
人間は愛し愛される存在がいて初めて、生きる喜び、生きる勇気を見いだすこ
とのできる存在です。もし、そのような存在を知らなければ、人生の意味も目的
も見いだせず、孤独で、淋しい人生を送る事になります。
多くの人が、そのような存在を身近に見いだせずに、悲しんでいるのです。子
どもたちの中には、非行に走る子もたくさんいます。このような子供達はどうし
たら立ち直れるでしょうか。
Tさんは、大工の仕事で生計をたてていました。息子は大阪のある中学校に通
っていたのですが、ある日、その息子が、校内暴力行為に加わっていたことを知
らされました。Tさんは憤りと何かいいようのない寂しさに襲われたのですが、
息子を叱る言葉さえみいだせないまま、ただ自分を責めることしかできなかった
そうです。
「大工の私にできることといったら、生徒が壊した窓を直す事、壊せば直すまた
直す。それだけだ」このように考え、次の日の朝から中学校の窓枠を修理し始め
たのです。
最初、生徒達は修理したところをねらったように壊していきました。Tさんは
黙々と壊されたところを何度も直していったのです。そのうち「あれはTのおや
じや。休みの日をさいてただで直してるんや。」こんな噂が広まるにつれて、窓
をこわしてきた生徒達の態度が段々と変わってきたのです。
卒業式を間近にひかえたころ、最後の仕上げにかかっているTさんの前に、暴
力行為のリーダー格だった生徒がやってきて、ピョコンとお辞儀をして走り去っ
ていったそうです。それ以後この中学校では生徒による暴力行為は全く発生して
いないそうです。
後になって息子さんは、当時をふりかえってこう語りました。「親父が窓を直
しているときは、なんや恥ずかしかった。みぞれの降る寒い日に背中丸めて釘打
ってんの見たら、アカン、窓壊すんは親父の背中をなぐるんと同じ事や。そう思
ったらもう泣きたい気になりました。」父親の後ろ姿に真実の愛を感じたとき、
この息子は立ち直ったのです。
(by 明智信作)