「ミスターグローブス」

 マイケル・グリンベルグさんはニューヨーク市民によく知られている人です。 彼は政治家でもスポーツ選手でもまた有名な芸術家でもありませんが、町に住む 人達、特に貧しい人達からよく知られていました。

 そして、彼が街角に止現れると「グリンベルグさん」と呼ばないで「ミスター グローブスが来た」と人達は言いました。「ミスターグローブス」つまり〃手袋 さん〃というあだ名がついていました。何故このようなあだ名がついたのでしょ うか。

 それは彼のスーツケースには書類だけでなく、いつもたくさんの手袋が入って いたからです。

 寒い冬の朝、グリンベルグさんは街角に立つと、辺りを見回して寒さのために 手を凍らせている貧しい人たちを探しました。そして見つけるとすぐその人の側 に走っていってスーツケースの中から手袋を出して、冷たい凍った手にその手袋 をはめてあげました。

 冬の間中、彼はこのようにして町を歩き回りました。そして冬が過ぎると、次 の冬のために手袋を、子供用、大人用、そしていろんな色の手袋をと、買いだめ するのです。

 このことを知って彼に手袋を寄付してくれる人も出てきました。ですから彼の アパートの部屋はいつも山のような手袋でうまっていました。

 このグリンベルグさんは特に裕福な人ではありませんでしたが、少しでも人々 を幸せにしてあげたいと思ってこのことを始めたのでした。

 ひとつの小さな親切が、人の心を動かす大きな愛となって育っていくのです。
(by 鴨田増一)