「春の夢」

 わたしは夢みた、いろとりどりの花を 五月の園に咲く姿さながらに。

 わたしは夢みた、緑の野を、楽しそうな小鳥のさえずりを。

 にわとりの声にわたしは目ざめた……

 わたしはただひとりここにすわり その夢のあとを追う。

 今一度目をつぶると、胸はまだあたたかく高叫るのだ、

 恵の木の葉の緑するのはいつ。

 これはウイルヘルム・ミユーラーの「冬の旅」という詩集のなかの「春の夢」 の一節です。あらゆる希望をなくした孤独な放浪者が、冬の野原や、凍った川を 渡って旅を続けていくうちに、ある日ふと見たのがこの「春の夢」でした。孤独 な放浪者は、木枯らし吹きすさぶ冬の日から、春の日のことを夢見て、心暖めて いたのです。

 私たちもこの青年と同じ気持ちで、春が来るのを待っていたのではないでしょ うか。三月になってたとえ寒い日が続いたとしても、庭の花壇の球根の芽がぐん とのびているさまや、木々の芽のふくらみを見ると、春が来たという実感がしま す。寒さもつめたさもあまり気になりません。

 ゲーテも春が好きでした。彼は春のことを「一年のうち最も魅力のあるひとつ の章」であると述べ、「人生という書物のこのべ−ジをひらくと、いつも楽しい 印象を受ける」と書きました。

 たしかに春は私たちに言い知れぬ喜びと希望を与えてくれます。しかしこの世 の春を待ち望むその同じ希望と喜びを別の方面に、すなわち聖書が約束している 永遠の世界にむすびつけることができたら、どんなにすばらしいかと思います。

 あなたもぜひ聖書をひもといて下さい。そうすればきっとそのなかに永遠の希 望を見つけ出されるにちがいありません。

(by 鴨田増一)