「コロラドの思い出」
コロラドは山の多い高原地帯に広がっているアメリカの中西部にある州です。
海抜一マイル(一・六一キロメートル)の高さにある州という意味で、マイル・
ハイ・ステートとも呼ばれています。
私達がその首都のデンバーについた時、さわやかな初夏の風が、遠来の旅人の
疲れを取り去ってくれるかのようにそよいでいました。そして頭上にはどこまで
も澄みきった青い空がありました。
このコロラドと共に忘れることのできないのは、この地を去る夜、日本人教会
の祈祷会で在留邦人の方々が歌っておられた讃美歌四〇四番の静かな旋律です。
山路こえて ひとりゆけど
主の手にすがれる 身はやすけし
私はこれまでに何十回となく聞き、また、何十回となく歌ったことのあるこの
讃美歌を、この夜ほど感銘深く聞き、また、味わったことはありませんでした。
私には、心からにじみ出るようなその歌声が、祖国を離れ、異国の地で四十年、
五十年と苦闘してこられた彼らの信仰の告白のように聞えました。この方々の人
生は決して平坦なものではなかったはずです。難行苦行の山路を一人で越えてい
くような、寂しい苦しい経験もあったことでしょう。しかし、イエス・キリスト
を信じる者には、神様の手にすがることによる安らぎがあったのです。
道けわしく ゆくてとおし
こころざすかたに いつか着くらん
歌声は続いていました。どんなに険しい人生行路の道もやがて、こころざすか
た−神のみ国に到達するのだという信仰です。その夜このようなすばらしい信仰
にあやかりたいものだと、深く感じたものでした。
(by 鴨田増一)