国連ビルにて

 もう20数年前になりますが、家内と私がニューヨークの国連ビルを訪ねた時 のことです。

 国連加盟各国の旗が色鮮やかにはためいている正面玄関を入ると、建物内部は、 20名ぐらいのグループに一人のガイドがついて見学することができます。私達 のグループは、一年半前からニューヨークに釆て英語を勉強し、二か月前からガ イドをしている大学卒のドイツのお嬢さんでした。

 私達は、世界各地から贈られた絵画や壁かけで飾られている廊下を通り抜けな がら、世界の60の国々から採取した青銅で作られたという日本国寄贈の平和の 釣鐘や、安全保障理事会、その他の会議場などを見て歩きました。

 ドイツなまりの英語もさわやかに聞こえる彼女の説明に聞き入りながら、私の 注意はだんだん彼女自身に移っていきました。彼女にはどことなく気品が漂って いるのです。そして、愛きょうよくいつも微笑みをたたえるその態度、その言葉 と物腰には人の心を明るく、なごやかにせずにはおかない不思議な力が秘められ ています。

 聖書には常に「やさしく、慎み深く」あるように、また「いつもやさしい言葉 を使」うようにとすすめられていますが、(ペテロ第一の手紙三の一六参照)ま さしくこの言葉をその通り実行しているような彼女でした。

 数日後の朝早くニューヨークをあとにした私達は、朝もやの中にかすむ摩天楼 がだんだん小さくなるのを見つめながら、国連ビルのさわやかな印象をかみしめ ていました。国連の心を代表しているような彼女、「私達にも彼女の心が必要だ !!」

 ふと気がついて窓の外を見ると、バスはニュージャージーの美しい野原を走っ ていました。
(by 鴨田増一)