ヨセフの遺言

 旧約聖書の創世記のなかにヨセフという人物が登場します。彼はイスラエルの 族一長であったヤコプの11番目の息子として生まれました。

 ところが父親の寵愛を特別に受けていたので、他の兄弟達のねたみをかい、兄 弟達によってエジプトに向かう隊商に売り渡され、奴隷生活を余儀なくされまし た。

 しかし、ふとしたことからエジプト王の目に止まって重んじられるようになり、 その国の総理大臣にまでなって、パレスチナから飢饉をのがれてエジプトに来た 父と一族を救う結果となりました。

 しかし、このような波瀾万丈の人生経験をへて、エジプトに落ち着いたヨセフ が片時も忘れなかったのは自分のふるさとである神の約束の地−カナン、現在の パレスチナ地方のことでした。彼はエジプトでは寄留者にすぎないことを自覚し ていました。

 その気持ちをよくあらわしているのが彼の遺言です。彼は死の床に肉親を招い て「あなたがたはわたしの骨をここから携え上りなさい」(創世記五〇の二五) といいました。

 王の位を除いてはこれ以上のことを望めない程の地位と権限が与えられていた にもかかわらず、ヨセフの安住の地がエジプトでなかったことを、この遺言から ハッキリくみ取ることができます。

 私達はややもするとこの世が安住の地になってしまって、神様の約束の地−天 国の価値を認めなかったり、忘れたりします。

 ヨセフの遺言はそのような私達に、この世の名誉や欲望にとらえられることな く、神様に、天に、目を向けることの大切さを教えてくれます。
(by 鴨田増一)