愛 それは寛容

 新約聖書のコリント人への第一の手紙二二章四節に「愛は実容であり、愛は情 深い」という言葉があります。本当の愛は寛大な心を持って人を受け入れること であり、許すことであり、忍ぶことであることを教えているのですが、このこと を感動的にうたいあげているのがイギリスの詩人テニソンの〃イノック・アーデ ン〃でしょう。

 イギリスのあるさびれた漁村に、アニィーという港で一番の器量よしといわれ た娘がいました。

 イノックとフィリップは二人とも彼女に心を寄せるのですが、結局アニィーは 積極的に働きかけたイノックの愛を受け入れ、二人は結婚し、子供もできました。

 そこでイノックはもっと妻や子供を幸せにしてやろうと一稼ぎを目的に航海に 出るのですが、難破し、離れ小島に漂着します。

 アニィーは消息を絶った夫をしのびながら生活していましたが、その様子を見 て心優しいフィリップは、淋しいアニィーとその子供達の面倒を見て、何かと力 になります。

 やがてイノックが死んだものと思ったアニィーはフィリップと再婚します。そ して二人の楽しい生活が始まります。

 そこへ離れ小島から奇跡的に救い出されたイノックが帰ってきます。村人から 一部始終を聞かされ、大変なショックを受けますが、彼はせめてアニィーを一目 みたいとその家に忍び寄り窓から家族の団らんの様子を見ます。その光景に打ち のめされそうになった彼は自分の心をおさえ、アニィーやフィリップの幸せを思 い、暗やみの中で「はやる自分の心をしずめ給え」と、神に祈り、その場を去り ます。

 テニソンはイノックというひとりの人物を通して、ここに誠実な愛の姿を描い ているのです。まことに真実の愛は寛容で、情深く、ねたむことをしないのです。
(by 鴨田増一)