食物繊維

 食物繊維は今や健康食の代表のように言われているが、長い間、食物繊維は 「食べても消化・吸収されない食べ物のカス」とされてきた。そのため、食物繊 維の多いゴボウも“ガスの元”以外の何物でもなかった。世界中でゴボウを「お いしい」と言って食べる習慣を持っていたのは日本民族だけだったようだ。

 こんな実話がある。太平洋戦争中に日本軍の収容所でゴボウを食べさせられた 連合軍の捕虜がいた。その捕虜が終戦後「私は木の根を食べさせられる虐待を受 けた」と訴えたのである。食べさせた側は軍事法廷にかけられたという。善かれ と思ってしたことも、習慣が違えば罪になるという典型的な例だ。

 ロシアではゴボウのことを“ごみの草”と呼んでだれも見向きもしない。

 ゴボウに代表される食物繊維が“市民権”を得るようになったのは1971年。 イギリスの医師がアフリカ人と自分たちのたべものを比較して「食物繊維不足は 大腸ガンのリスクを大きくする可能性がある」と警笛をならしてからのことだ。

 食物繊維には二種類ある。水溶性のものと難溶性のものだ。ゴボウを含めて野 菜にはセルロース、セミセルロース、リグニンなど難溶性の食物繊維が多い。こ れらの食物繊維の特徴は、消化器官を通過するときに水分を吸収してかさを増や し、十から二十倍に膨れ上がること。そのために腸のぜん動運動を盛んにし、腸 内にたまっているものを排泄する。

 当然、便秘を予防すると同時に、腸の中で“悪玉菌”と言われるウェルシュ菌 や大腸菌なども押し流してくれる。この整腸作用が大腸ガンを予防するというわ けだ。

参考文献 中日新聞掲載 野菜健康法 健康ジャーナリスト 山崎征治