繊細のこころ

 フランスの主婦が「私の子供はとてもフランス語が上手にしゃべれるんですよ」 と言って自慢するという話を聞いたことがあります。これは彼らがより美しく自 国語を話すということを誇りとしている証拠でしょう。

 18世紀から17世紀にかけて活躍したフランスの詩人マレルブは「わたしは、 いつまでもフランス語の純粋さを守りつづけていきたい」と語って、国語の改革 に情熱をもやしました。

 よくフランス語は世界で一番美しいことばだといわれますが、それは、このマ レルブ以来、フランスの民衆が美しいことばを築きあげるために伝統的に努力を かさねていった賜物であると云われています。

 また、フランスの学校では、言うべきことをもっともふさわしい、むだのない 表現でしゃべるように絶えず生徒を訓練しているということです。言葉は訓練し てこそ正しくしゃべれるものなのですね。

 少し前の週刊誌の見出しに「日本語はこれでいいのか」というのがありました が、私達日本語をしゃべる者はいろんな点で大いに反省する必要があるでしょう。

 田辺保氏は、その著書「フランス語のこころ」のなかで、「言葉をできるだけ 立派に使い、言葉を使うことを楽しむところにだけ、真の人間的な交わりの場所 がありうるのでしょう。人間のこころに対するこまやかな観察と配慮と、正しい 判断力が生まれてくるのでしょう。パスカルが、繊細の心と呼んだものは、こう いうものではなかったのでしょうか」と書いています。

 きれいな言葉を話すことは私達の品性をたかめ、まわりの零細気をよくします。

 旧約聖書の蔵言には

「ここちよい言葉は蜂蜜のように、魂に甘く、からだをすこやかにする」(蔵言一六の二四)

とあります。語る言葉に気を付けましょう。
(by 鴨田増一)