「女がその乳のみ子を忘れて、その腹の子を、あわれまないようなことがあろう か。たとい彼らが忘れるようなことがあっても、わたしは、あなたを忘れること はない。(イザヤ49:15)

 アホウドリ

   アホウドリって、皆さんはどんな鳥だと思いますか? 私は、きつと「アホウ、 アホウ」つて鳴く、たいした事のない鳥だと思っていました。

 ところが、アホウドリって、大きくて、とても美しい鳥なのです。ロばしは、 薄いピンクで、まっ黒な目は、まんまるで、大人になると頭から首まで金色にそ まります。翼を広げた長さは、2メートル以上。赤ちやんの時は、まっくろで、 あまりきれいではありませんが、体が白くなって、美しい大人になるまで、10 年もかかるのです。

 アホウドリは、東京のはるか南にある火山島に住んでいますが、昔、その鳥島 には、足のふみ場もないほど、たくさんのアホウドリがいました。ところが、欲 の深い人間達が、次々とアホウドリを殺して、その羽を、羽毛ぶとんなどにして しまったのです。

 どうして、そんなにつかまってしまったかと言うと、アホウドリは、地上では、 大きくて、よたよた歩いていて、大変のろまなのです。風にむかってかけ足し、 よいしよって、いきおいをつけないと、飛びたてないのです。人間が前に立った りすると、にげる事さえできないのです。それで、次々、つかまったわけです。 鳥のくせに、すぐに飛ぶ事ができず、のろまだからアホウ鳥って言われるように なりました。

 ところがある日、島がおこったように火をふいて、鳥島にいた悪い人間達は、 一しゆんのうちに死んでしまいました。だから今から30年前アホウドリは1羽 も見つかりませんでした。でもアホウ鳥は、いき残っていたのです。その数は、 10羽ほどでしたが、しだいにふえていきました。今では200羽ほどしかいま せんが、人間がつかまえる事も禁じられて鳥島に平和がもどってきました。

 アホウドリは、10月になると鳥為にかえって来て、すぐ結婚のおどりをはじ め、土や草で巣をつくり、たったひとつのたまごを産みます。人間の手から、は みでる程の大きなたまごです。お母さんが、えさをさがしに行っている間、お父 さんがたまごをあたためて、お母さんが帰って来るまで、10日も2週間も、た まごをだきつづけるのです。

 冬の冷たい風の中で、火山灰が音を立てて体にあたっても、雨が、はげしく打 ちつけても、じっとして動きません。たまごが冷えないように水かきの上にのせ  おなかでつつむようにして、親鳥は、2ケ月の聞、かわるがわる、たまごを守 ります。

 12月のある日、たまごに小さな穴があき、中からかわいい声が聞こえます。 親鳥は、やさしく返事をします。ひなが親鳥に手伝ってもらい、からから出てき ました。鳩くらいの大きさのひなは、黒っぽいうぶ毛につつまれています。

 ひなは、生まれて少したつと、えさをねだります。親鳥のロばしに自分の口ば しをあて、ミルクのようなものを流しこんでもらいます。栄養はたっぷりです。 ひなは、親がはこんで来たえさをどんどん食べて大き<なり、おなかははちきれ そうで、親よりも重くなります。そして親鳥は、だんだんえさを運ばなくなり、 半年以上も、大切に育ててきたひなを残して、海の向こうへ飛び去っていきます。

 それを知らないひなは、いつまでもお母さんの帰りを待っているのです。でも いつまで待ってもむだでした。このままでは、死んでしまいます。自分で飛んで 海へえさをさがしに行かなければなりません。

 坂をヨタヨタ登り、かけおりては翼をばたつかせますが、うまく飛べず、フワッ と浮いても、すぐ落ちてしまいます。来る日も来る日も練習をしますが、えさを 食べなくても大丈夫なのでしようか?そうです。この時のために親より重くなる ほどの栄養をとっていたのですから。

 そして、やっと飛べるようになりました。ひなは、すっかりたくましい親鳥に 成長し、練習できたえた翼をいっぱいに伸ばし、力強くはばたきながら、ゆっく りと飛んでいきました。一人ぼっちで、飛びかたやえさの取り方、何から何まで 自分で覚えるのです。
(提供:母と子のはこぶね学園)