全てをゆだねる

 男は、漂流していました。みんなに見送られて、一人小さなヨットに乗り大海 に出帆しました。太洋を単独で横断しようとしていたのです。

 出帆して2日目の夜、大嵐に遭遇しました。この嵐によって、彼の乗っている 小さなヨットのマストが根本から折れ、波にさらわれてしまいました。

 嵐は、夜明け近くまで、一晩中続きました。男は、一睡も出来ず、マストの無 いヨットにしがみついていました。

 明け方、嵐も過ぎ去り、ホッとしたのも束の間、未だ波のうねりが高い中で、 ヨットが横転して、うとうと睡魔に襲われていた男は、海に投げ出されてしまい ました。

 男は、あわてて、投げ出されたヨットに戻ろうとしましたが、舟は、瞬く間に 離れてゆき、見えなくなってしまいました。

 周りには、島影一つ見えない大洋に放り出された男は、死にたくないと言う思 いで一杯でした。

 そこで、男は、泳ぎ始めました。どちらの方向に泳いでよいか分かりませんで したが、泳がないと沈んでしまいますので、ひたすら泳ぎ続けました。

 泳ぎ続けて、もう何時間になるのでしょうか。長い間泳いだような気がします。 身体は、疲労困憊で、もうこれ以上、腕も上がらないほどになってしまいました。

 その時、初めて死というものを実感しました。「自分は、このまま、泳ぎ疲れ て死んでゆくのか。」そう思うと絶望的な気持ちで一杯になりました。

 その絶望的な思いの中で「同じ死ぬのなら、下を向いて死ぬのではなく、この 青い空を眺めながら死のう」と思い、それまで、一生懸命泳いでいたのをやめて 全ての力を抜いて、仰向けになりました。

 するとどうでしょう。男は、ぽっかり波間にいつまでも浮き続けることが出来 たのです。そして、運良く近くを通った客船に救われたのでした。

 私達も、人生という大海で嵐にあって全てを失い、絶望の淵に立つことがある かもしてません。しかし、その様なとき、自力で何とかしようとはせず、全てを イエス様に委ねるという選択が必要だと思います。
(by 和夫)