悪しき者は追う人もないのに逃げる、正しい人はししのように勇ましい。箴言28:1

 ぽくじやないよ

 星さんの家は、団地の十階のエレベーターのすぐ横にあります。生協(生活協 同組合と言って皆でいいものを安く貫いましょうというグループ)の卵のポスト をしているので、皆のお家の卵がとどきます。それを分けて、玄閑の外に置いて おくと、お仕事から持って来たおばちやん達が、とりに来ます。

 ある日、星さんが お出かけから帰って、エレベーターを降りたとたん、そこ に居合わせた、けんちやんが、「ぼくじやないよ、ぼくがやったんじやないよ」 と言いながら 逃げて行くのです。

 見ると、エレベーターのまえは、めちゃくちゃに割られた卵で足の踏み場もな いくらいです。星さんは、「けんちや−ん、おしえてー、誰がやったのー」って 聞くと、けんちやんは 遠くから「向こうのおにいちゃんが来てやったんだよ一」 と言って、又逃げ続けます。星さんは、けんちゃんの様子が なんだかおかしい なと思いました。

 ある日、星さんが又、卵を分けている時、けんちゃんと、その弟のまことちゃ んが、そばにいて見ていました。そして、まことちやんが「おばちゃん何書いて んの?」と聞くので、「このお家はいくつ、ここはいくつと、卵の数を書いてい るのよ。

 でも、このノートのいたずら書きは、誰がしたんでしょうね。」と星さんが言 うと、「これ、僕達がしたんだよ。卵を割ったのも、僕とおにいちゃんだよ。」 と、にこにこしながら、まことちゃんは言いました。

 星さんが、少し離れて立っていた、けんちゃんの方を見ると、けんちゃんは恥 しそうに 悪いナーという顔をしていました。星さんが「もう、しないでネ」と 言うと、けんちやんほ「うん」と、首をたてにこっくりして言いました。

 その日から、けんちやんは、星さんの家に遊びに来られるようになりま した。それまでは、星さんの顔を見たら隠れるようにしていたのです。

 心がはればれとしていると、こわがることがないのですね。
(提供:母と子のはこぶね学園)