以下は、子供礼拝の時に説教したものです。

  黒い穴

 ここにある男がいました。男が歩いていると、自分の目の前に突然、黒い穴が 出てきました。男は、びっくりして穴の中をのぞき込みましたが、中は真っ黒で 何にも見えません。

 小さい石を、その穴に投げ込んでみましたが、何にも返事がありません。次に、 一寸大きな、手のひらの大きさの石を投げ込みましたが、やはり何の返事もあり ません。そこで、今まで食べていた林檎の食べかすである林檎の芯を投げ入れて みました。

 やはり何の返事もありませんでしたが、男は、これは便利だと思いました。彼 は、その穴をゴミ箱代わりに使い始めたのです。色々な不用な物、汚い物、やっ かいな物を、全てその穴の中に投げ入れました。そして穴の中に投げ入れるたび に、気持ちがすっきりしました。

 こうして何年も、いやな物は、その穴に投げ入れる生活をしていましたが、あ る時突然その穴が、無くなりました。そして数日経つと、今度は、それまで自分 の足下にあった穴が、自分より遙か高いところに出てきたのです。

 そして、そこから小さな石が落ちてきました。暫くして手のひらの大きさの石 が落ちてきました。その後、林檎の芯が落ちてきました。男は、何が起きたのか を理解しました。その小さな石、手のひらの大きさの石、林檎の芯は、自分がずっ と前に穴に投げ込んだものでした。

 それから、その穴からは、それまで自分が投げ込んだ不用な物、汚い物、やっ かいな物が、次々と落ちてきました。男は、自分が何年も投げ込んだいやな物を 考えると、ぞーっとしました。

 これは、一つのお話ですが、おじさんは、これと似たような経験をしました。 おじさんの場合は、この黒い穴は、おじさんの兄弟姉妹でした。おじさんは、4 人兄弟で、上に3つ年上の姉、下に3つ年下の弟、6つ年下の妹がいます。

 小さい頃は、背丈も倍くらい違い、おじさんは、弟や妹を自分の家来のように 扱い、気に入らないとたたいたり、脅したりしました。この小さい弟や妹は、そ れがいやで渋々おじさんのいうことを聞くのでした。

 おじさんは、弟や妹をいじめているときは、大変気持ちがすっきりしました。 学校でいやなことがあっても、その腹いせに弟や妹をいじめると、いやなことを すっかり忘れるのです。つまり、おじさんは、いやなことと言うゴミを、妹や弟 という名の弱い者をゴミ箱にして捨てていたのです。

 しかし、おじさんは、大事なことに気が付きませんでした。それは何だと思い ますか。それは、弟や妹は、いつまでも弟や妹の状態ではいないと言うことです。 それまで小さかった弟や妹が、時が過ぎるとともに、おじさんと同じように大き くなり、体力も付いて、むしろおじさんより大きくなったのです。

 おじさんは、それに気が付いて、思わずぞーっとしました。今まで自分が、弟 や妹をいじめていたのが今度は、逆に彼らにいじめられるのではないかと思った のです。自分のしたことを考えてぞーっとしたのでした。

 でも彼らは、おじさんより大きくなってもおじさんをいじめませんでした。お じさんからいじめられて、いじめられるもののつらさ、悲しさを知っていたから、 自分たちは、その様なひどいことをするまいと思ったのです。

 人は、皆この黒い穴を持っています。そしていやなことがあると、それをゴミ としてその穴に入れようとします。何故かというと、それが一番簡単だからです。 すっきりするのに一番簡単だからです。しかし忘れていけないのは、この穴に捨 てたゴミは、又必ず、自分の所へ戻ってくるのです。

 でも私達は、このゴミを捨てないと弱ったり、病気になったりします。それで はどうしたらいいのでしょう。

 それは、この黒い穴の他にもう一つ穴があります。それは何でしょうか。それ は祈りという穴です。いやなことがあったとき、このいやなことをイエス様にお 祈りすることにより無くしていただきましょう。

 ゴミを缶、不燃物、生ゴミなどと分別して捨てるように、良いことは、黒い穴 へ、いやなこと、悪いことは、お祈りの穴へ捨てましょう。間違っても逆になら ないようにしましょう。でも良いことは、お祈りの穴に入れても結構です。

 イエス様は仰いました。
「私の兄弟であるこの最も小さいものの一人にしたのは、私にしてくれたことな のである。」

 この最も小さい者というのは、先週の安息日学校でも学んだように、弱い者、 妹や弟のような自分の小さな家族を指していますが、もう一つ、実は、自分自身 を指すのです。小さい者に親切にすると言うことは、自分自身に親切にすると言 うことなのです。

 小さい者に意地悪をすると言うことは、自分自身に意地悪をすると言うことな のです。小さい者に親切に、そして良いことだけを出来るようにイエス様に力を 与えて下さいとお願いしましょう。

※穴の話については、一部その内容を星新一氏のSFショートより引用していま す。
(by 和夫)