指輪の価値

 精神科医ホルヘ・ブカイ氏の著書、『寓話セラピー・目からウロコの51話』 の中に次のような寓話が紹介されていました。

若者が救いを求めて、1人の賢者を訪れます。「先生、私は自分がとてもつまら ない人間に思えて、もう何もやる気が起こりません。誰もが私のことを、役立た ず、不器用、ばか者と言います。どうしたらいいでしょう」。

 賢者は若者に目を向けることなく言いました。「あ、すまんがの、今わしは困っ ていることがある。その問題を解決せんことには・・・その後ならおそらく・・・ お前の力になれるかもしれん。もしお前が手伝ってくれるなら」。

「よ、喜んで・・・」若者は口ごもります。「またしても自分は後回し、相手に されていない」と感じました。「よろしい」賢者は左手の薬指にはめていた指輪 をはずして若者に渡しました。

「これを持って市場に行ってくれ。借金を返すために、できるだけ高い値段で売 らねばならん。金貨1枚以下では売ってはいかんぞ。売れたら、金貨をもって帰 るのじゃ」。

 若者は市場に着くと、すぐに指輪を見せてまわりましたが、人々は多少の興味 をいだくものの、若者が「金貨1枚」と口にするやいなや、誰もが笑ってそこを 過ぎ去りました。

「指輪ひとつに金貨1枚は高すぎるよ」と親切に教えてくれる人もいました。市 場ですれちがう人々百人以上にあたりましたが、結局、買ってくれる人は誰もい ませんでした。

 賢者のもとに戻った若者は言います。「すみません。これで金貨1枚もらうの は無理でした。銅貨の1枚か2枚なら売れたかもしれませんが...でも私には指 輪の本当の価値を偽ることはできません」。

「ほれ、お前が今言ったことはとても重要じゃ。まずは指輪の本当の価値を知ら ねばならんな。もう一度市場に行って、今度は宝石商のところへ行きなさい。宝 石商以上にその指輪の価値をはかれる者はいない。

 彼に、指輪をいくらで買ってくれるか尋ねなさい。しかし、今度は言い値がい くらであっても、売ってはならん。持って帰ってくるのじゃ」。

 若者は再び市場に行きました。宝石商では、指輪をランプの光で調べ、ルーペ で観察し、重さを測って、そして若者にこう言いました。「先生に伝えてくれ。 今すぐこれを売りたければ、私は金貨58枚までしか出せない」。

「58枚?」若者はとび上がりました。「そうだ、もう少したてば70金貨で売れ るかもしれないが、もし売り急いでいるなら・・・」。 若者は興奮して賢者の 家に駆け戻り、起こったことを話しました。

「座りなされ」話を聞いてから賢者は言います。「お前はこの指輪のようなもの じゃ。世界にひとつしかない高価な宝石。そしてこのように、本当の専門家だけ がお前の価値を知ることができる。

どうしてお前の本当の価値を、誰もが見抜けるなどと思いたがるのじゃ?お前自 身でさえ、その価値がわかっておらぬ」。そう言いながら賢者は左手の薬指に指 輪をはめなおしました。

「知らないのですか。あなたがたの体は、神からいただいた聖霊が宿ってくださ る神殿であり、あなたがたはもはや自分自身のものではないのです。あなたがた は、代価を払って買い取られたのです。だから、自分の体で神の栄光を現しなさ い」(Iコリント6:19、20)。

 私たちは神様の命と引き換えに買い取られています。私たちの命は全宇宙より も価値があるかけがえのない命です。その本当の価値を知っておられるのは私た ちを創られた神様だけです。

 私たちが聖霊の神様を日々心にお迎えして、神様のご栄光を現そうと願うなら ば、神様は、私たちを価値あるにふさわしい者として、神様と人々とのために豊 かに用いてくださいます。
(by 藤田 昌孝)