投影
『寓話セラピー 目からウロコの51話』に次のようなお話が載っていました。
ある男が、家の主治医に電話をしました。
「先生、ご相談があるのですが」
「どうしました?」
「実は、私の妻のことでしょっと・・・」
「奥様がどうかしましたか?」
「耳が悪くなったみたいなんです」
「えー、本当ですか?」
「それが本当なんです。診に来てくれませんか」
「そうですか、まあ通常、難聴は、急性のものではないですから、月曜日にでも
こちらに連れてきていただけませんか。診させていただきます」
「先生、月曜日までなんて待てません。すぐ来てくださいませんか」
「困りましたねー。ところで、聞こえないって、どうしてお気づきになったので
すか?」
「そうですね・・・だいたい呼んでも返事がありません」
「それなら、たまたまテレビの音が大きかったとか、いろいろ原因はありそうで
す。とりあえず、奥様の耳がどれくらい悪いのか調べてみましょう。ご主人は今
どこにいますか?」
「書斎です」
「奥様は?」
「台所です」
「そこから奥様を呼ぶことはできますか?」
「できます。では、呼んでみますね。お――い、お前――・・・だめだ、聞こえ
ません」
「今度は書斎の扉までよって、廊下越しに呼んでみてください」
「お――い・・・さっぱりだめです」
「そうですか、ではコードレス電話に切り替えて、奥様を呼びながら、廊下を渡っ
て、台所に近づいて行ってください」
「お――い、お前――・・・お――い・・・・だめです。台所の入り口まで来ま
したが、家内は目の前で背を向けたまま皿洗いをしています。全然、返事があり
ません。だめです」
「もっと近づいてみて」
男は台所に入ると妻に近寄り、肩に手をかけて、そして耳元で叫びました。
「お――い」
すると、妻は怒りの形相で振り向きざまに言いました。
「何よ、何なのよ!さっきから、さんざん私を呼んでおいて、その度に『何よ
―』って返事してるじゃない。あんた、日に日に、耳が悪くなってんじゃないの。
一度病院に行って診てもらったらいいのよ・・・」
心理学に「投影」という言葉があります。「自分の無意識にある不快な内容が、
他人の性質であるかのように感じられること」などと、説明されています。
私たちは他人を「あの人は優しい人だ」とか、「あの人は怖い人だ」とか、1
つのイメージで決め付けて思い込みやすいところがあります。そのほうが単純で
分かりやすいからです。
しかし、実際はそのイメージというものは、それを感じる自分自身の心の内に
ある同様の部分、嫌いな部分を重ねていることがあるのです。または、自分が作っ
たイメージ重ねているに過ぎないことがあります。
聖書には次のように書かれています。
「人を裁くな。あなたがたも裁かれないようにするためである。あなたがたは、
自分の裁く裁きで裁かれ、自分の量る秤で量り与えられる。7:3 あなたは、
兄弟の目にあるおが屑は見えるのに、なぜ自分の目の中の丸太に気づかないのか」
(マタイ7:1〜3)。
しかし、これ、逆手に取って、人の良いところに注目しているならば、「あの
人は優しい人だ、いつもありがとう」と感謝しているならば、自分もそんな優し
い人になれるか・・な・・?
(by 藤田 昌孝)