イエス様のパン種

「天の国はパン種に似ている。女がこれを取って三サトンの粉に混ぜると、やが て全体が膨れる」(マタイ13:33)。

 ユダヤでは人々は、それまで「パン種」を譬えに使う場合、いつも悪い影響力 を考えていました。発酵はいつも腐敗を連想させていました。「パン種」は罪や 悪の代名詞。過越しの祭りの準備をするときには、家にある「パン種」をどんな 小さなものでも見つけ出して焼き捨てることになっていました。

 しかし、イエス様はここで、「パン種」を「天の国」の譬えにお用いになりま す。「天の国」とは「神様のご支配」のことです。それは1つに、私たちがやが て永遠の命をもって迎えられる、文字通りの天国。もう1つは、この世にあって、 神様のお働きが顕著に現されるその所です。

 イエス様は、今まで悪い影響力の譬えに用いられていた「パン種」を、一変し て、神様による良い影響力を表すために用いられました。

 それまで、人の悪い影響力について、悪い面が取り上げられていたのかもしれ ません。「異邦人とお付き合いしてはいけません。悪い影響を受けますよ」。

 しかしイエス様は人の持つ良い影響力に注意を向けられました。「あなたの中 にある祝福が、周りの人々を幸せにします。良い影響力を持ちますよ」。

伝達と伝導(共鳴)
 私は教師時代、常々、「教育には『伝達』と『伝導(共鳴)』が必要だ」と感 じていました。

「伝達」とは、知識の伝達です。教えるべきこと、学んでもらうべき事柄を正確 に伝え、児童たちには、それをしっかり身につけてもらうことが必要です。

 同時に教育には、「伝導(共鳴)」が必要です。この場合、「伝道」ではなく 「伝導」です。熱伝導の伝導です。教師の心の「震え」が児童に伝えられ、児童 が共鳴すること。教師の感動の「熱」が児童に伝えられ、互いに共鳴しあうこと です。

「パン種」の影響とは、この「伝達」と「伝導」に似ています。イエス様の語ら れた福音のメッセージが、わかりやすい言葉で伝わる。これはある意味情報の「伝 達」です。

 同時に、キリスト者の持っている「イエス様にある喜びと平安」が、いつのま にか、周りの人々に伝わってゆく。キリストの命による「心のぬくもり」が広がっ てゆく。キリストにあって生きる者の躍動・「震え」に、周囲が共鳴する。これ こそ「パン種」の持つ「伝導(共鳴)」だと思います。良い影響力です。

 ところで、人はなぜ良い影響を周りの人々に与えることができるようになった のでしょうか?それは、イエス・キリストから「パン種」「命」をいただいたか らだと思います。

 それまで「教訓や律法」の「伝達」しか受けていなかった人々が、イエス様よ り、キリストの「命」を「パン種」としていただいたからだと思います。

 私たちも今、イエス様から「パン種」をいただいています。イエス様の命を心 に宿しています。それはひょっとすると、誰かが、あなたに「伝達」「伝導(共 鳴)」をもって、イエス様の「パン種」を与えてくださった結果かもしれません。

 今度は、私たちが誰かに、イエス様の「パン種」を「伝達」「伝導(共鳴)」 させていただく番です。
(by 藤田 昌孝)