「真実な言葉の力」
お元気ですか? 明智信作です。愛知県蒲郡市に生まれ、「愛」だけをテーマ
に墨彩詩画を描いておられる広浜和寿さんは、七人兄弟の末っ子でした。母親は
彼をひどく甘やかせて育てたそうです。いつもいつも自分だけが特別なのを感じ
ていたそうです。母親は広浜家に後妻として嫁いで来られた方でした。彼女自身
も再婚で、生き別れになった子供が一人いたそうです。広浜さんは、若い頃、自
分の母親の事をあまり知らなかったそうです。その中で、一番ショックだったの
は、母親がカタカナしか書けないという事でした。ある時、彼がわんぱくをして
家出をし、蒲郡の近くの町でひとり暮らしをしていたことがありました。そこへ、
父親がオートバイで訪ねてきました。「お母さんに持っていってくれと頼まれた
から」と一枚の紙を差し出しました。そこには赤鉛筆で、たどたどしいカタカナ
が、まるで電報のように、書かれていました。
「オカアサンガ、カタカナシカ、カケナクテ、オドロイタコトトオモイマス。コ
ンナ、ムガクナハハガ、カズトシノヨウニ、アタマガヨクナリスギタコニ、ナニ
モイッテアゲラレマセンガ、ワタシガ、コンナニ、カズトシノコトデ、シンパイ
サセラレ、クロウサセラレルノハ、キット、ワカイコロ、ワタシガ、テバナシテ
シマッタ、ジツノコニウラマレテ、バチガアタッテイルノダトオモウ、マイニチ
マイニチ、カミダナニムカッテ、ゴメンナサイ、ゴメンナサイヲ、クリカエシテ
イマス、カズトシモ、ワタシノソダテカタガ、マチガッテイタノデスネ、ホント
ウニゴメンナサイ、コンナハハヲ、ユルシテクダサイ」
読み終わった広浜さんは、ワーワーと大声で泣き続けました。それからほどな
く彼は家に戻ったそうです。お母さんが、カタカナで子供に手紙を書く事は余程
のことだったでしょう。ひたすら息子のことを心配し、しかも息子を責めるので
はなく、自分の育て方が間違っていた、ごめんなさい、ゆるしてください、と切
実に訴えた母親の真実の言葉が広浜さんの心を動かしたのでした。
(by 明智信作)