「愚かなほどの愛の力」
お元気ですか? 明智信作です。ひろはまかずとしさんは、「愛」だけをテー
マにした墨彩詩画を描いておられますが、このひろはまさんが、ご自分の本の中
に、父親のことを書いておられます。父親が交通事故で入院したという知らせを
受け、命に別状はないと知った時、彼は家へ走りました。そして留守の家の父親
の箪笥をさぐり、定期預金通帳一通と印鑑を取りだして、銀行で解約し、百万円
くらいのお金を引き出してしまいます。さらに、彼は、自分のしたことをわから
ないようにするためか、頭の数字が同じで一桁小さな額の定期預金を再度作り、
箪笥へ戻してしまうのです。そのあとのことです。「父が退院してほどなく悪事
は露見した。突然、『すぐに来なさい』との電話がかかった。僕はお金を使って
しまい、自分のした事はすっかり忘れていて、久しぶりにこづかいでもくれるの
かといそいそと出かけた。家に入ると何か様子が変だ。退院したとはいえまだ床
の中にいた父は泣いていた。その顔を見て自らの悪行を思いだした。開口一番、
怒られるかと思ったが意外な言葉が発せられた。 『どうして言わんかったのだ、
それほどお金が要るなら要ると。悪かったなあ、言えんかったのか。言い出しに
くかったのか。そんなふうに思わせたわしが悪かったなあ、これからは言えよ。
出来る事ならしてやる、出来んことは出来んから・・・。もう済んだ事はいいか
ら、その時のお金、あれで足りたのか、もう困っていないのか』『うん』と僕は
小さな声で答えると、父は母に合図して、『中途半端なことはしなくていいから
』とだけ言って、あの時再契約した一桁少ない定期預金のお金を僕に渡してくれ
た。」 この父の態度を甘やかしすぎる、愚かだとお考えになる方もおられるか
もしれません。しかし、ひろはまさんのその後の愛と優しさにあふれる詩を読む
とき、真実の愛が実っているのを知ることができます。わたしたちも、この父親
にまさるほどの大きな、途方もない神の愛によって、今、赦され、生かされてい
るのです。
(by 明智信作)