「意外な天使」

 お元気ですか、明智信作です。旧約聖書の中に、

「人は外の顔かたちを見、主は心を見る」

という言葉があります。人間は、人の心を見ることができないので、どうしても 外観にとらわれがちです。しかし、人は見かけによらないものだ、ということを 体験した30代の女性の話を、ある本の中で読みました。意外な天使、という題 がついていました。ある日、その女性が、病院へ行く途中にめまいが起こり、水 たまりで転んで、スカートを土ろんこにしてしまいました。そのままでは、病院 へも行けません。朝のラッシュ時で、大勢の通行人の中からは、くすくすと笑う 声も聞こえ、持病の不安がつのり、脈拍は一分間に150も打つほどで、冷や汗 がたらたらと流れ、気が遠くなりかけたときでした。突然、番長風の女子高生が、 「おばさん、これはきなよ」と言って、この女性をガレージの陰へ連れて行き、 紺色のひだスカートをスルリと脱いで、彼女にはかせてあげました。この女子高 生は「うち、このスカートきらいやねん。おばさん、返してくれてもいらないよ。 今度は気をつけなよ」と言って、ズダ袋みたいな物の中から短パンを出してはき、 靴のかかとを踏んで走り去って行きました。親切を受けたこの女性は次のように 書いています。「私は、ただうれしくて涙がこぼれ、ボーッとしてしまい、名前 を聞くのも忘れてしまいました。きれいに着飾ってさっそうと歩いている人たち が、見て見ぬふりをして通りすぎるなか、この言葉の荒っぽい女子高生の親切を 受けた私は、人は見かけによらないものだと、つくづく感じました。自分の受け たご恩をほかの人に返したいと思いつつ、今日もあの場所を通って病院へ行く私 です。」実はこの女性は、ご主人を亡くしたショックで、心臓神経症とうつ病に なって病院へ通っていたのです。あの女子高生には、ただ自分の制服を貸してあ げただけでなく、相手が気を使わなくてすむように、さらに、返さなくても良い ように、配慮までしています。こんな親切と気配りができたらすばらしいですね。
                             (by 明智信作)